染色とは何か?

さまざまな定義があると思いますが・・・、

長年友禅にたずさわってきて、一つだけ、実感として心に留めていることがあります。

染色とは、布を染めること。

布は、何かを包むために生まれたのだと思います。

そしてその布に美しい模様を描こうと思ったのなら、それはきっと大切な物を包むためだったのでしょう。

私が初めて染めた着物は、母のための訪問着でした。 重い古代縮緬に、裾を共薄でぼかし、波に片輪車、朱の紐を散らしました。

仕立て上がって母が身につけた時、“あ、母を包んでいる・・・”という感覚にはっとしました。

布を染めるとはこういうことなんだと、漠然と理解したように感じます。

それ以来、染色ということに対し、面白さだけでなく、なんとも言えず温かい、慈しむようなイメージを持つようになりました。

今もその気持ちを大切に、心を込めて制作しています。