染色とは、染料を繊維の奥深くまで浸透させ、定着させることです。

顔料や、絵の具などの塗料で布に模様を描くこともできますが、それは表面に塗料を付着させることであり、染色ではありません。(*顔料を呉汁のタンパク質で定着させる紅型染めなどは、染色に含まれます。)

Tシャツの全体の色は染色、模様のプリント(カパカパしていて裏に浸透していない部分)は塗料であり、染色とは言いません。

友禅染めでは基本的に、模様の部分も、地色と同じように染色を施します。

そのために、染料のにじみを防ぐ糸目や、地色を染める時に模様に色が入らないための糊伏せなど、手間のかかる工程が必要になるのです。

本来の手描き友禅染めは、模様の彩色も繊維にしっかり浸透し、裏から見ても美しいものです。

全体を染めた後、上から模様をペイントすれば簡単なのですが、ガバガバして絹の質感が損なわれ、身にまとった時の風情も何もありません。

  

そうして染色し、洗い上げ、美しい模様の布に生まれ変わった生地に、最後に上からの仕上げを施します。

あくまで、染色を引き立てるための加工です。

仕上げの加工には、

 顔料描き

 金銀加工

 刺繍   

などがあります。

 

顔料描きでは、花の蕊や葉脈、草木の細い茎や枝、生き物の顔や毛などを描き加えたり。

玩具や道具物の輪郭を薄墨や白茶で囲み、立体感を出したり。

糊で染め残した白場に、墨や顔料で細かな模様を描いたり。

紅型や辻が花風に、墨で隈取りを施したり。 etc・・・。

 

紙と違って織目があるので、顔料描きはとても難しく、手間がかかり、現代の友禅では少なくなってきました。

明治〜昭和初期の逸品には、繊細な秋草に虫篭や、極細の弦を張った和楽器模様など、顔料描きによって、目を奪われる美しさの作品が多くあります。

 

金銀加工には、箔、砂子(細かい金銀を蒔く)、金銀線、金銀泥、などがあります。

本金はギラつかず、しっとりした品があります。

また、年月が経っても褪せません。

逆に本銀は、月日が経つと、銀独特に色やけしてきます。

個人的には渋くて好きですが、いつまでも変わらない銀をお好みの場合、アルミ箔を使ったりします。

ちなみにニセ金は、本銀に色を塗ったものが多く、たいてい色やけします。

 

染色の後のさらなる加工〜友禅染めの特徴です。

染め上がった布を、いかに効果的に引き立てるか。

仕上げが良いと柄が浮き立ち、ぐっと印象的になり、目を引きつけます。

 

マルニ友禅工房がこだわる工程の一つです。